ひとりで仕事をやり始めたころ、門をたたいたのが、さかい新事業創造センターでした。
何も、なかったけれど、新事業として、自分なりに考えた結果、思いついたのが、「堺・泉北 再生工場」………。
ノムさんの再生工場が好きで、古びた(他球団を解雇になった)選手を自分の元で蘇らせるノムさんにちなんで、この新事業提案で、入居依頼出させていただきました。
【事業内容】
住宅や施設を再生する為、堺・泉北に於いて、使用者、又は住宅取得者と、既存ストックをつなげる役割が必要とされ、確かな建築技術をもって建築を再生すると同時に、人と人のつながりを構築することによって地域、まちの活性化を目指します。
既存住宅に関しては、岐阜森林アカデミー 木造建築病理学「住宅医ネットワーク」に所属、それを元に、高齢化した建物に適切な診察・診断を行い、それに基づく治療(=改修工事)を行うための技術をふまえ、従来の新旧入替のリフォーム工事ではなく、耐震、温熱性能を重視した改修工事を行ないます。
また、既存のビルストックを、建築工事としてのリノベーションによって活用、再生し、市民、住民の集いの場、交流の場を造ります。
書類を何度も訂正しながら、何度か審査に落ち、半年後くらいにやっと入居が許されました。なかなか厳しい審査でした。
15㎡くらいの1室でしたが、住めば都、素晴らしい仕事空間でした。
また、これから新事業をがんばってゆこう、という方々に囲まれ、またそれをサポートされるマネージャーさん、事務局のみなさんがおられ、
働く環境、またひとりで働き始める環境として、最高で、おそらくここで得た経験は今後の働き方の考え方の中で活きてくるのだろうと思います。
2014年あたりから、堺市の泉北再生室主導で、泉北ニュータウンの活性化プロジェクトが始まりました。
最初は、ニュータウン周りを歩き回り、魅力を発掘しそれを発進するところからの作業でした。
これまでも泉北ニュータウンに住んではいましたが、魅力を探すという作業は初めてのことで、実際に歩き回ってみると、自分の住環境がいかに恵まれていることか、よく理解できましたし、こんなポテンシャルを持っている環境であれば、その使い方によってどのようにでも使いこなせると考えました。
私がこの企画の中で考えたのが、「だんぢりキッチン」
公園までリアカーでだんぢりのように練り歩き、公園でゲリラ的にカレーを作る。
たくさんの仲間が、カレーを食べに来てくれて、こんなコミュニティってあるんやな、って実感しました。
泉北で、魅力を見つけ、仲間と発信することを「ソフト」と呼ぶとしたら、
地域の既存住宅をどのように活かすのか、を考える「ハード」面も重要で、この両面で地域を活性化させたいと考えました。
泉北ニュータウン住宅リノベーション協議会に参加させていただきました。
リノベするための学校や、中古不動産のバスツアー等、
不動産や建築にかかるまでの実質的なプラットフォームまでは行かなくても、泉北ニュータウンで中古住宅をリノベする、という流れを促進する活動に取り組みました。
初めのころとは違った盛り上がりを見せ始めたのはこのころからか。
堺市、泉北再生室を中心に、たくさんのプレーヤーが街を盛り上げる感じになってきました。
この地域の持っているものが、今の時代に合っている、そして、これからの時代のために、地域住民が自主的に盛り上げてゆけるんだと実感するようになってきました。
そんな泉北ニュータウンも50周年。
50年も前に、このニュータウンが開発され、今からどのように活きてゆくのか、を住民で考えようとする事業。
ここで、「暮らし はたらき つながる箱」を提案しました。
ベッドタウンとして開発されたニュータウン。
でも、その役割を終え、これからは、地域で循環するまちへ。
まちの中で、人々が集い、そこで働き、つながることが出来たら素晴らしい、そんな思いでした。
この事業の中で、具体的に何をするのか?
これに関しては結構自分の中で考え、迷い。訪ねたのが東吉野オフィスキャンプさんでした。
実際に遊休不動産を探し、そこで企画をしようかと思いましたが、
ここはやはり、泉北の緑豊かな公園で実施することになりました。
普段は、何もない公園。
ここに箱を作ります。
そして、コワーキング。
何度か、このスタイルで企画してみました。
実質的に働く、というところまで行かなかったけれど、ひとつ今後の提案は出来たように思いました。
2019年3月、東吉野オフィスキャンプでお世話になった坂本さんが開催されたコワーキングスクールキャンプ@京都に参加。
1泊2日で全国から、コワーキングにまつわる方々が集い、今の、そして未来のコワーキングについて話し合いの場に触れることができました。
2日目の朝、ホテルのモーニングを食べながら描いたスケッチ。
自分が理想とする箱を描いてみました。
エントランスから、コワーキングスペース、自分が仕事する場所があったり、シャワー設備まで。
描いてみると、本当にこんな場所が欲しくなってきて。
泉北に帰ってきてからは、泉北ニュータウンの隅々まで、ええとこないかなー、と探し回りました。
んー、こんなとこがええな、ここは違うな。
実際に探し始めてみると、またイメージが濃く湧いてきました。
「ニシさん、こんな物件ありますけどー」
知り合いの不動産屋さんから電話が。知り合いに連絡したり、ネットやSNSで探していると告知していたため、ご連絡をいただけたのです。
へー、おもいしろそうな物件。これはさっそく見に行こう。
ロケーションは、自分が思い描いていた環境に非常に近かった。
ただ、これをどのようにリノベできるのか、結構手がかかるようにも見えました。
しばらく考え………、
この物件を蘇らせる決意をしました。
これまで、ひとりで仕事はじめてから取り組み続けてきた耐震補強工事。
堺市耐震推進室さんに、教えていただき、何度も中古住宅を蘇らせてきました。
そして、もうひとつの性能である断熱気密の省エネ性能。こちらは新住協関西支部で、学ばせていただいてきました。
それらの技術をこの建物に投入。
リノベでしたが、ある程度工事が落ち着いたときに地鎮祭をさせていただきました。
神主さんは、地元の美多彌神社さんです。
まずは、既存外構の撤去工事から。
南面にあったサンルームと、離れの小屋をすべて撤去。
庭にあったもの、すべて解体処分しました。
母屋の全景が見えてきました。
外部も内部もほぼスケルトン状態まで解体をしました。
平屋でしたので、2階で構造計算するよりはかなりやりやすく、でも基礎工事からしっかりリノベ用の耐震補強です。
基礎補強する部分とそうでない部分の区別をしっかり、工事費用を詰めてゆきます。
壁という壁はすべて、耐震壁として、構成しています。
今回、リノベですが、BELS申請をしており、断熱の外皮性能UA値は、0.37。
断熱気密によるリノベ工事です。
壁はボード気密の天井はシート気密。
外壁は、もともとの土壁を残し、蓄熱層として利用。
土壁の外から耐震壁としての構造用合板を施工。
その上から断熱材フェノバボードを施工し、外断熱の計画です。
窓は、YKKの樹脂窓330と430の併用です。
外壁仕上げ材としては、焼杉を採用。
内部も造作工事が仕上がってきました。
堺市の耐震補助と併用したのが、ZEH(ゼロエネルギーハウス)補助申請。
普段から、しっかり働いてもらいます。
いよいよ美装工事へ。
掲示板は、DIYで黒板用塗装です。
床仕上げは、紀州産の檜と杉のフローリングで貼り分けました。
こちらも、仕上げはDIYによる蜜ろうワックスです。
エントランス入ったところ、コワーキングスペースの本棚。
既存床の間の半分を、薪ストーブの設置スペースとしました。
さて、外構工事です。
これまであこがれてきた雑木林の庭。
外構屋さんが、丁寧にひとつひとつの石を積み上げてゆきます。
これがファサード。
ここが森になり、そこに入ってゆくようにエントランスを計画しました。
緑、投入。
自家菜園にも挑戦。
ヨガ教室の皆さんです。
つむプロの皆さんも来てくれました。
普段、平日はコワーキングスペースとして活用いただき、
だんぢりキッチンのカレーも、社食として提供!
本格的なプロの料理人さんによる「旅するレストラン」企画。
その夜その夜で、ゆっくりばこがいろんな国のレストランに生まれ変わります。
飲食店営業と菓子製造業の許可を取得。
日替わりでカフェをやったり、レストランやったり、パン教室やったり。
これから何かを始めたい、そんな方々を応援してゆきたいと思います。
周りは田園風景が広がり、四季折々の景色を眺めながら暮らす家。
ランニングやサイクリングの拠点としてもご利用いただけます。
自家菜園で作った野菜も収穫できました。
これまで、自分にとっては長い間温め続けてきた構想でしたが、ここでひとつの節目。
自分の思い描いてきた拠点が出来上がりました。
しかし、世間はコロナによって、いろんな暮らし方、働き方、そもそもは人と会うこと自体に制限がかかる時代に。
でも、こんな時代であるからこそ、そのやり方を工夫しながら、自分の本当にやりたい生き方を磨いてゆける時代でもあると感じます。
自分らしい豊かさとは、何なのか。
画一的ではない、千差万別ある生き方が、交錯しながら創造する時間や場所。
目的は大きいですが、今後地域拠点として、どう活きるのか。
しっかり考えながら、見守ってゆきたいと思います。